このたび、加納様はじめ何人かの有志の方たちのご尽力により、医療・福祉タウン研究会が発足するはこびとなりました。
私は、図らずもその会長を仰せつかりました。ただ、この大役をお引き受けすることになったのは、この 研究会の目指すところが、今の医療界で問題となっているところの患者本位の医療を取り
戻すひとつのテストケースになるのではないかと考えたためです。
翻って今の医療界の状況を見てみますと、良質な医療の提供、効率的な医療、安全な医療など患者本位の医療サービスを目指すビジョンが挙げられております。これらの大きなビジョンを達成するために、証拠に基づいた医療を取り入れること、医療の包括支払い方式を取り入れることによって、医療機関間のパフォーマンスを比較しようとしていること、DPCによって医療費の高騰を抑制しようとしていること、さらにはITを活用して病院業務の効率化と診療の標準化等を目指しています。
これらの考え方自体は、少子・高齢化を向かえ医療資源が乏しい中で、従来の医療の質を保ち、あるいはそれ以上の医療を行うために
必要なことと思いますが、しかしながら、よくよ く考えて見ますと、これらの視座はあくまでも医療者側のそれに立ったものであります。いくら患者さんの満足度を上げようとしても、患者さんを患者様と呼ぼうとしても、結局は医療機関あるいは医療者として患者さんを見ていることに変わりありません。
近年、この視座を医療者対患者さん、あるいは患者さんと言うよりも住民や地域全体の 中の医療機関という視座に変えてゆく必要があると思っています。すなわち、医師(医療者)対患者という関係をよく見直してみる必要が
あると思います。どのように考えたらよいかと いうことですが、
1.病院という建物からネットワークへ
2.医療施設からシステムへ
3.出会いから関係へ
4.行うことから一緒にする
という考え方へのシフトであります。そして、これらを実現するためには、両者を結びつける情報の重要性、クリアカットなビジョンと価値、患者と病院関係者および地域を結びつける新しい関係の構築が必要であります。
そういう意味から、今回の医療・福祉タウンという考え方は極めてそれに近いものであります。このタウンには、専門性の違った医療機関がいくつか含まれますが、医療機関ということを認識させるのではなく、住民にとって生活の一部分(前述のシステム)となるような違和感のない生活システムという考え方であります。システムという連携であるからこそ「この病気は私の専門でないから、専門の医者に行ってくれ」ということではなく、医者同士はもちろん、患者も含めて心が通い合う連携のある街作りが考えられます。そういう従来と違った理念でのタウン構想ですので、勿論、医療機関と住民だけでなく、リハビリ施設や福祉施設なども一体となった、違和感のない医療福祉システムであります。
医療界のみならず社会全体が、経済的な不況によって心が荒み、殺伐とした状況が生 まれている中、医療改革は経済的にも改善を
達成するためにますます重要でありますが、ひとつ間違うと、住民や患者さんの心はむしろよくなるための治療よりも悪化の方向へ
向ってしまう可能性が十分あります。今回の 医療・福祉タウンは、そういう社会環境をこのタウンの中においてはむしろプラスの方向に変え、住民と医療福祉機関とが一体となって楽しい街作りを目指すものであります。
その実現には、いくつかの課題があると思います。医療・福祉タウンのそのもののあり方の問題、医療福祉機関と住民との関係作り、特にITをどのように利用していくかということは、大きな課題であります。さらに医療施設の配置の問題、町全体のデザインから医療機関の待合室・診療室に至るまでのデザイン、若い人たちから高齢者に違和感なく受け入れられる環境作りが大切です。細かいことになりますが、カルテそのもののあり方も考える必要があります。今回は連携を密に行うために電子カルテの導入を考えております。このように課題は山積みしておりますが、それぞれの課題をどのように解決していくのかの糸口を見つけ、それを解決するために、議論し、至った結論を実現するのがこの研究会だと思います。
この研究会の構成メンバーは、医療者の中にはもちろん第一線で活躍する医師をはじめ、病院管理や情報管理の専門家、福祉・介護の学識経験者、さらには実務者、建築家、デザイナー、弁護士、会計士など、多士済々の方々で構成されております。きっと有意義
な討論と結論が導かれるものと思います。 本会がますます発展し、ややもするとマイナス思考になりがちな医療界の現状を打破する力となれば、幸いであります。最後になりますが、皆様のご協力をお願いし挨拶とさせていただきます。
|